思想の原点
「大丈夫」という一言が、
僕の人生を変えた。
同じことばでも、
人を追い込むこともあれば、
人を立ち上がらせることもある。
草刈正年が、ことばの力を探究しはじめた原点は、
自分自身がことばに救われた体験から始まりました。
業務に追われ、心と体のバランスを崩していた時期がありました。気持ちは落ち込み、前に進まなければならないとわかっていても、思うように力が入らない。
そんな時期に、出会う人たちから何度も声をかけられました。
「草刈、大丈夫か?」
心配してくれていることは、わかっていました。けれど、その問いを受けるたびに、どこかでエネルギーが落ちていく感覚がありました。
本当は、「大丈夫じゃない、助けて」と言いたかった。
けれど、口から出てくるのは、
「大丈夫だよ」
という強がりでした。
平気なふりをするほど、内側では孤独が深くなっていく。ことばは、意味だけではなく、響きで届く。
そのことを、僕は自分の体験を通して知ることになりました。
同じことばでも、
人を弱らせることも、
人を立ち上がらせることもある。
そんな時、ある3人の友人から、共通して繰り返し言われたことばがありました。
「草刈、大丈夫だ!」
それは、今の状態を確認する問いではありませんでした。無理に励ます言葉でもありませんでした。
そこには、僕の未来を信じてくれている響きがありました。
まだ立てる。
まだ終わっていない。
まだ自分には進める道がある。
そう思わせてくれる力が、その一言にはありました。
同じ「大丈夫」でも、
「?」がつくのか、
「!」がつくのかで、
人への届き方はまったく変わります。
「大丈夫?」は、今の状態を確認することば。
「大丈夫!」は、未来を信じることば。
この違いに触れたとき、僕はことばに魅了されました。
ことばは、ただ考えや感情を伝えるための道具ではない。人の意識を変え、表情を変え、行動を変え、人生の向きを変える力を持っている。
これが、僕にとっての思想の原点です。
ことばは、ただの音ではありません。誰が、どんな関係性で、どんな響きで届けるのか。
その違いによって、人の心の向きは変わります。次の一歩が変わります。人生の見え方が変わります。
人は、使うことばによって世界をつくる。そして、自分に向けていることばによって、自分の可能性を決めている。
だから僕は、ことばの力を探究しはじめました。
僕は書道家として路上に座り、目の前の人の目を見て、インスピレーションでことばを書く活動をしてきました。
1万人以上に、ことばを届けました。
「元気が出ました」
「勇気をもらいました」
その場では、表情が明るくなる。笑顔になってくれる。
けれど、またその人に出会うと、表情が曇っていることもありました。
そのとき、僕の中に問いが生まれました。
いいことばを渡すだけで、人は本当に変わるのだろうか。
ことばをもらうだけではなく、自分自身がことばを生み出せる人を増やしたい。
そう考え、僕は個性筆文字協会を立ち上げ、ことばを届ける人を育てる活動を始めました。
けれど、そこで多くの人から出てきたのは、
「むずかしい」
「できません」
「ごめんなさい」
ということばでした。
人を応援したい。ことばの力を信じたい。
でも、人はなかなか動かない。現実は、簡単には変わらない。
その葛藤の中で、僕は一度、ことばの力をあきらめかけました。
あきらめ世界にいたのは、
僕自身だった。
人の現実には、二つの世界があると考えています。
あきらめたことばを持って生きている、あきらめ世界。
あきらめないことばを持って生きている、あきらめない世界。
当時の僕は、無意識にあきらめ世界にいました。
「いいことばを渡しても人は変わらない」
「ことばだけでは人は変わらない」
そういうことばを、自分自身の内側に持っていたのです。
気がつけば僕は、お客さんが求める筆文字のデザインや書き方を教えるようになっていました。
求められるものを提供していたので、仕事としては成立しました。お金も稼げました。
けれど、その現実とは裏腹に、心は少しずつ落ちていきました。
「本当にこのままでいいのか」
「自分は本当にこれがやりたいことなのか」
いつからか、講座が売れるたびに、ため息が出るようになっていました。
自分が築き上げてきた実績や価値を、自分自身が信じられなくなっていたのです。
人生には、思いがけない転機が訪れることがあります。
大切な人の病や別れと向き合う経験を通して、僕は、ことばが人の意識や生きる力に与える影響を、改めて深く見つめ直すことになりました。
医療としてではなく、人が何を信じ、どんなことばを持ち、どんな意識で生きるのか。
そのことが、人の内側に大きな影響を与えるのではないか。
一度はあきらめかけた、ことばの力への探究心に、もう一度、火がつきました。
そこから僕は、潜在意識、言語心理学、問い、書、対話、そして人の現実が変わる瞬間を探究し続けました。
その中で見えてきたのが、ことばに宿る五つの力です。
地のことば。
水のことば。
火のことば。
風のことば。
空のことば。
人は、どんなことばを持つかによって、現実の受け取り方が変わります。
そして、どんなことばを使うかによって、次の一歩が変わります。
この五つの力は、あきらめ世界から、あきらめない世界へ移行するための実践体系です。
一度は、ことばの力をあきらめました。
けれど、やっぱり僕は、ことばが人にもたらす無限の影響力を信じたい。
人の意識を変え、人の人生を動かすことばを使える人を増やしたい。
あきらめた夢。
言えなかった本音。
信じきれなかった自分。
その奥にある、まだ終わっていない可能性に、ことばで火を灯したい。
今、僕は再び、あきらめないことばを持ち、あきらめない世界に生きています。
Stories では、ことばが人の現実に触れていく瞬間を紹介しています。
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ことばの力で、
「あきらめる」を「あきらめない」に変えていく。
そのための一歩を、ここから始めてください。